当院では「なるべく歯を削らない、神経を残す治療」を前提として治療を行っており、おかげさまで多くの患者さんからお喜びの声をいただいております。

しかしながら、患者さんの中には

「神経ってやっぱり残した方がいいんですか?」

「また痛くなると困るから、神経を抜いてほしい」

と思われる方もいらっしゃいますので、今回は歯の神経を抜くデメリットについてご紹介させていただきたいと思います。

そもそも、歯の神経の役割って?

歯の神経は歯髄(しずい)と呼ばれ、血管と神経が入り混ざった状態で存在しています。

歯髄には、歯に栄養や水分、酸素を運んだり、免疫などの防衛反応を伝達するなど重要な役割があり、そのおかげで歯はツヤや丈夫さを保つことができます。

そのため、歯の神経がなくなってしまうと、栄養分や水分が歯に行き届かなくなってしまいまるで枯れ木のように脆く、割れやすくなってしまいます。

そうすると、必然的に歯の寿命も短くなりますので、ブリッジや入れ歯、インプラントなどの補綴手段が必要となり、結果的に治療にかかる費用も大きくなってしまうケースが多々あるのです。

歯の神経を抜くデメリット

1.歯が脆くなり、割れやすくなる(歯根破折のリスクが増大)

日本人の抜歯の原因としては「歯周病(37.1%)」「むし歯(29.2%)」ですが、実は歯周病や虫歯に続く第3位の原因として挙げられるのが「歯根破折(17.8%)」です。

(公益財団法人8020推進財団「平成30年(2018年)の第2回永久歯の抜歯原因調査」にて)

歯根破折の原因はさまざまですが、過度な咬合力や食いしばり、歯ぎしりなどにより引き起こされることが多いです。歯根破折は神経のある歯の場合は通常起こることがなく、ほとんどが神経の無い歯に起こります。

それは、神経のある歯の場合、歯に栄養分や水分が行き届いているため、多少のダメージや圧力が加わっても歯が「しなる」ことで加わった力を吸収してくれますが、神経の無い歯は水分や栄養分を失っているため、枯れ木のように「しなり」を失い、割れやすく、折れやすくなっているためです。

また神経を抜いた歯の治療として金属の土台が使われていたりすると、金属は強度が強すぎて歯根破折が起きやすくなってしまいます。

※当院では歯根破折防止のために金属の土台をほとんど使用しません。

2.歯の色が黒や茶色に変色してしまう場合がある

歯の色が変色してしまう原因としては神経を取ったことで歯の内部の代謝がなくなり古くなったコラーゲン物質などが歯の中に入り込んで沈着し、時間と共に褐色〜黒色に変色していきます。

中から黒くなってしまった歯は、外側からセラミックを被せたり歯の内側からのホワイトニングを行う必要があります。

3.歯の根の再治療が必要になる(歯の根の先に膿が溜まる根尖性歯周炎になりやすくなる)

根尖性歯周炎とは、歯の中の神経の入っている管(根管)内でばい菌が繁殖してしまい、歯の根の先の部分に膿が溜まってしまう状態を言います。

歯の神経がある状態ですと、歯の神経の持つ免疫力により、侵入してきた細菌をやっつけたりブロックしたりすることができますが、神経がない歯はばい菌に対する抵抗力が失われてしまっているため感染を起こしやすくなっているのです。

回数をかけて神経を取って被せ物を入れても小さい隙間からばい菌が入ってしまい再治療になるケースが往々にしてみられます。

根管が一度でもばい菌に感染してしまうと将来再治療を繰り返す場合もあるので神経を取らないに越したことはありません。

4.痛みを感じなくなるため、歯のトラブルに気づくのが遅れる

歯の神経には、「痛い」や「しみる」といった歯の異常を教えてくれるという大事な役割もあります。

逆に痛みが発生しないということは、たとえ歯の内部で虫歯が進行していたとしても虫歯が大きくなるまで気づくことができず、治療が遅れてしまうというデメリットもあります。

歯科治療は基本的に、治療が遅れれば遅れるほど大掛かりなものとなり、治療にかかる費用も時間も多く必要になります。

歯が脆くなり割れて抜歯になってしまえばブリッジや入れ歯、インプラントなどの治療が必要になってきてしまいます。

最小限の費用と労力で済ませるためにも、歯の神経を残しておくことが大切です。

5.乳歯の場合は生えてくる永久歯に影響が出る場合がある

「乳歯の神経を取ったら、永久歯の神経もなくなってしまうの?」

と心配に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、乳歯と永久歯は全く別の歯ですので、乳歯の神経を取ったからと言って後継永久歯の神経もなくなってしまうわけではありません。

ですが乳歯が虫歯になり乳歯の根の先に膿が溜まっているような状態の場合、その乳歯の下に控えている後継永久歯に影響が及ぶ場合があります。

ばい菌が永久歯に感染してしまい、永久歯が変色したり永久歯の発育を阻害して形成不全の状態で生えてきてしまうのです。

まとめ

大きく分けて5つでしたが、やはり神経を残すことはその歯の寿命や患者さんの日々の生活のためにもとても大切なことです。

当院では歯の神経を残すための治療として「MTAセメント治療」を行っていますので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。