口腔がんのリスク因子には、喫煙・飲酒・口腔内の衛生状態・慢性的な物理的刺激などがあります。特に喫煙と飲酒の両方がある場合はリスクが高まります。ただし、リスク因子があっても必ず発症するわけではなく、反対にリスク因子がなくても発症する可能性はあります。

こんにちは。新潟市中央区・からさわ歯科医院、院長の唐澤です。
前回は「口腔がんとはどのような病気なのか」についてお話ししました。今回は、口腔がんのリスクを高める「リスク因子」についてお話しします。

そもそも「リスク因子」って何?

リスク因子とは、その病気が発生する可能性を高めることが分かっている要因のことです。大切なのは、「リスク因子がある=必ず病気になる」ということではない、という点です。さまざまな要因が複雑に関係してがんが発生すると考えられています。

「これをしているから口腔がんになる」という単純な話ではなく、「こうした要因がある場合は、口腔内の変化により注意していきましょう」という意味で読んでいただければと思います。

口腔がんの主なリスク因子

国立がん研究センターがん情報サービスでは、舌がんを含む口腔がんの発生要因として以下が挙げられています。

  • 喫煙
  • 飲酒
  • 口腔内の衛生状態
  • 慢性的な歯の接触による刺激

特に、喫煙と飲酒の両方の習慣がある場合には、より注意が必要であることが分かっています。

① 喫煙

たばこの煙には多くの化学物質が含まれており、その中には発がん性物質も含まれています。国立がん研究センターでは、喫煙と口腔・咽頭がんとの因果関係について、科学的に明らかになっているとしています。

喫煙は肺がんだけの問題ではなく、口腔・咽頭、喉頭、食道など、煙が通過する部位のがんとも関係しています。現在喫煙している方は、禁煙することでがんになるリスクを下げることができます。

② 飲酒

飲酒は、口腔がんを含む頭頸部がんなどとの関連が知られています。国立がん研究センターでも、飲酒によって頭頸部がんのリスクが確実に増加するとされています。

特に注意したいのが「喫煙+飲酒」の組み合わせです。口腔がんでは、喫煙と飲酒の両方の習慣がある人では、より注意が必要であることが分かっています。

③ 口腔内の衛生状態

口腔内の衛生状態の悪さも、口腔がんの発生要因のひとつとして挙げられています。

「歯磨きが苦手だから口腔がんになる」という単純な話ではありません。ただ、虫歯や歯周病だけでなく口の中全体を清潔に保つことは、口腔内の健康を維持するうえで大切です。

④ 歯や入れ歯などによる慢性的な刺激

慢性的な歯の接触による刺激も、口腔がんの発生要因として挙げられています。例えば「歯の尖った部分が舌や頬に当たる」「合っていない入れ歯が同じ場所に当たり続ける」などの状態です。

もし同じ場所に何度も傷ができたり、入れ歯が当たって痛かったりする場合には、歯科医院で相談されることをお勧めします。

HPVと口腔がんの関係について

インターネットで「HPV(ヒトパピローマウイルス)と口腔がん」という情報を見かけることがあります。ここは正確に理解しておくことが大切です。

HPVは、一部の中咽頭がん(のどにできるがん)の発生に関係することが分かっています。一方、口腔がんと中咽頭がんは発生する場所が異なる別のがんです。そのため、「HPV=口腔がんの原因」と単純に言うことはできません。

インターネット上では口腔がんと中咽頭がんに関する情報が混在しやすい部分です。「HPVが口腔がんの直接原因」という表現は正確ではありませんのでご注意ください。

口腔がんとは「リスクがある人」だけが注意すればいい?

それは違います。喫煙や飲酒の習慣がない方でも、口腔がんが発生する可能性はあります。「タバコを吸わないから大丈夫」「お酒を飲まないから心配ない」と考えるのではなく、リスク因子を知ったうえで口の中の変化に気をつけることが大切です。

自分でできること

禁煙を考える

喫煙している方は、禁煙することでがんのリスクを下げることができます。「自分だけでは難しい」という場合は、禁煙外来などに相談する方法もあります。

飲酒を控える

飲酒量を減らすことも、がんのリスクを下げるために重要です。完全にやめることが難しい場合は、飲酒量・頻度を見直すことから始めてみましょう。

口の中を清潔に保つ

毎日の歯磨きや必要に応じた歯科医院でのメインテナンスを行いましょう。

口の中の傷や違和感を放置しない

同じ場所への刺激が続いている場合は、一度歯科医院で確認してもらいましょう。

まとめ

  • 喫煙は口腔・咽頭がんの明らかなリスク因子です
  • 飲酒も口腔がんを含む頭頸部がんと関連しています
  • 喫煙と飲酒の両方がある場合は、より注意が必要です
  • 口腔内の衛生状態や慢性的な刺激も発生要因として挙げられています
  • HPVは一部の中咽頭がんとの関連が知られていますが、口腔がんと単純に同一視することはできません
  • リスク因子がある=必ず口腔がんになるわけではありません

次回は「口腔がんの初期症状とは? ~口内炎が長引くときに知っておきたいこと~」についてお話しします。

よくある質問(FAQ)

Q. 喫煙をやめれば口腔がんのリスクはなくなりますか?

A. 禁煙することでリスクを下げることができます。ただし、禁煙してもリスクがゼロになるわけではありません。リスク因子を減らしつつ、定期的に口の中の状態を確認することが大切です。

Q. 少量の飲酒なら問題ありませんか?

A. 飲酒量が多いほどリスクが高まる傾向があります。特に喫煙と組み合わせた場合に注意が必要です。飲酒量を控えることが、リスクを下げるための一つの方法です。

Q. 口腔内をどのように清潔に保てばいいですか?

A. 毎日の歯磨き・歯間清掃(フロスや歯間ブラシ)に加え、定期的な歯科医院でのクリーニングが効果的です。自分のお口の状態に合ったケア方法については歯科医院でご相談ください。

※この記事は、からさわ歯科医院 院長(歯科医師・唐澤)が監修しています。

■ 参考・出典

・国立がん研究センター がん情報サービス「舌がん 予防・検診」
・国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防法」
・国立がん研究センター がん情報サービス「がんの発生や治療へのたばこの影響」
・国立がん研究センター がん情報サービス「中咽頭がんについて」